幸せ家族計画
助手席に乗り込むと、綾乃は少し怪訝そうな顔をする。
「あれ、煙草の匂い」
「分かるか? 今日ちょっと英治と出かけて。吸わせなかったんだけど、アイツ体に匂いが染みついちゃってるんだよな」
「そっか。葉山さん、元気だった?」
「元気。紗彩はつわりだって」
「そうかー。大変。私つわりないから楽だよねー」
話しているうちに家に着く。
締めきっていた部屋は暑く、早速エアコンをフル稼働させた。
「すぐご飯作るね」
「いや、ちょっと休憩しよう」
「でも」
「いいから」
渋る綾乃を居間に連れてきて座らせる。
神妙な顔をした俺を、不思議そうに眺める視線には邪気が無い。
「達雄?」
「アヤ、俺さ」
「なあに?」
「し、心配なんだ」
何だか顔が熱くなってきた。
手にも汗がにじんでいる。
なんでこう、大事な時に格好つけられないんだろう。