幸せ家族計画
「仕事はね、今のところ大丈夫なの。職場の人も気を使ってくれてるし。
今パートさんの募集もかけてもらってて、産休に入るまでに覚えてもらうことにもなってるの」
「そうなのか」
「でも、やめた方がいい? 達雄がそう言うならやめてもいいよ」
「いや、綾乃の意思が一番大事だから」
胃の痛みが少しずつ和らいでいく気がした。
なんだ。こうやって。
本人に話すだけで良かったんだ。
綾乃はゆっくりと、俺に抱きついてくる。
体はもちろん綾乃の方が小さいから、俺が抱きしめてるように見えるのだろうけど。
本当に、守られているのは俺の方かも知れない。
「ありがとう。心配してくれて」
「いや、重たいって思われるかと思ってた」
「ううん。お兄ちゃんぶられてるより、ずっと好き」
気持ちを言葉にして、幸せを得られる毎日。
俺は今、かなりの幸せ者なんだと実感したりして。
「あ、動いた」
「え?」
「ホラ触ってみて? これが胎動だよね」
「マジで?」
喜ぶ綾乃が俺の手を腹に当てる。
しかし、掌には何の振動も感じられない。