幸せ家族計画
『じゃあなんだよ』
「だから、名前。赤ん坊の名前って決めたのか?」
『名前? まだだよ。でも綾乃が昼間暇だから色々考えるって言ってた』
そうか。
お前のとこは綾乃ちゃんが考えるんだな。
賢明な判断かも。
達雄に任せてたら、生まれるまで決まらないかも知れない。
「そうか。いや、聞きたかったのはそれだけなんだ」
『何? 名づけで悩んでんの』
「何でもない、じゃあな」
『そうなんだ。あはは、英治が悩んでんの、久しぶりにみたな。良いぜ、相談に乗って……』
からかい半分になってきた電話をブツリと切る。
人の話も参考にならないな。
やっぱり自分で考えよう。
男の名前、女の名前。
なんか考えるとっかかりが欲しい。
漠然と名前って言っても、星の数ほどあるもんな。
蛍光灯を睨みつけている俺を、サユが上目づかいに見る。
「どうした?」
「お父さん面白いんだもん」
ふふふ、と笑われて恥ずかしくなる。
面白い事を言った覚えはないんだが。
俺はいったいどんな顔してたんだか。