幸せ家族計画

俺はそっと居間を出て、サユにばれないように静かに和室へ入った。

今まで人気のなかった部屋はひんやりとして肌寒い。

そこにある仏壇を開くと、優さんの位牌と写真がきちんと並べられている。

髪の毛よりも日に焼けた皮膚の方が黒っぽい。
眉に意思を宿したその青年は、とても幸せだと語っているかのように笑っている。


この写真を初めて見た時、正直言えば焦った。

一見、チャラチャラしたタイプにも見える。
紗彩が恋人に選ぶタイプの人間とはとても思えなかった。

なのに、あの堅実な彼女が、自分が働いてまでも彼と一緒になることを選んだ。

それだけで、愛情の深さが計れるような気がして、怖かった。


「どんな思いでサユの名前は決めたのかね」


ポツリと、そう呟いてみる。

俺は、どちらかと言えば現実主義者だ。
死人と話が出来ると本気で信じてる訳じゃない。

どうやったって亡くなった人は生き返らないし、過去を嘆いたところで取り戻せるものでもない。

だけど紗彩やサユを見ていると、こうして言葉にする事がまるきり無駄なことではないと思えてきた。


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