幸せ家族計画
地下鉄の最寄り駅で降りて、まず最初に実家に寄る。
学校帰りの紗優は直接実家の方に帰ってくるからだ。
「お母さん、ただいま。紗優もお帰りなさい」
「ママ! お帰り」
パタパタと音を立てながら玄関までくる紗優。
その後からのんびりと母がやってくる。
「紗彩、少し休んでいけば?」
「ううん。ご飯も作っちゃいたいから帰るわ。
紗優、ランドセルもってらっしゃい?」
「うん」
すぐさま居間へ戻る紗優を見ながら、「きんぴらごぼう多めに作ったからもって行きなさい」と呟いて、母はキッチンの方へ向かう。
なんだかんだと、実家が近いのは助かる。
それに、母も一緒に暮さなくなってから逆に寂しくなったのか、前よりもかいがいしく紗優と遊んでくれるようだし。
母に別れを告げ、紗優の学校の話を聞きながら家に帰る。
「ママ、エレベーター気をつけてね」
「大丈夫よ」
英治くんの最近の口癖が、紗優にもうつってる。
案外心配性なのねってのも、結婚してから知った事。
ここに英治くんはいないのに、何だか傍にいるような気がしてドキドキしてくる。
あなたがいることで、私や紗優が変わっていく。
同じように私たちがいることで、あなたも変わって行っているのかな。
そんな風に考えてるだけで幸せになるなんて、なんてお手軽なんだろう。