幸せ家族計画
気がつけば、紗優の呼吸は寝息に変わっている。
もう一度布団をかけ直して、紗優の部屋を出た。
リビングでは、こちらに背中を向けたまま英治くんがグラスを傾けている。
怒ってるのかな?
そっと近寄っても振り向かない。
不安になって声もかけれずにいると、彼の肩が小さく揺れた。
覗き込んでみると、クククっと肩を震わせて笑っている。
「何よ! 怒ってるのかと思ったのに」
「怒ってないよ。ちょっと喜んでる。愛されてるなって思って」
素直にそう言われちゃうと、意地はる気も無くなって来ちゃう。
私は隣に座って、でも顔はそっぽを向けた。
「私は悔しいわ。
ヤキモチ焼くの私ばっかり。
英治くんは、私の心配なんてしてないでしょ」
「うーん。まあね、紗彩が他の男を好きになるとは思ってない」
「やっぱり!」
苛立ったまま英治くんに視線を戻すと、彼が見ていたのは和室の方向だった。
ユウの位牌のある部屋。
その存在を彼はいつも意識してるんだろうか。