幸せ家族計画
「……恋愛も体力いるからさ。
紗彩はもうしないだろうなって思うだけだよ。
俺が戦っていかなきゃいけないのは、過去の人間だからな。
彼に負けないように、でも彼を失くさせないように。
これって、紗彩が思ってるよりは、大変なんだぜ?」
「英治くん」
彼の抱えてる気持ちを、そんな風に聞くのは初めてかも。
『思い出ごと愛せるよ』
そう言った彼の言葉の中に詰まっていたものを、
私は今まで、ちゃんと理解していなかったのかも知れない。
過去を気にしない。
それだけじゃなくて、私が思い出に浸るのを許してくれてる。
当たり前のように受け止めていたけれど、
英治くんが私を愛してくれているなら、それは簡単なことではない。
視線を遠くに向け続けている英治くんの腕に頬を寄せる。
こっちを向いて。
そんな風に願いながら、私は大切なことを言葉にして伝えていないことに気がついた。