幸せ家族計画

「後は、達雄に連絡……」


二つ折りの携帯を開いたところで、ハタと考える。
今電話したら、彼はすぐにでも早退して帰ってくるだろう。

でもまだ痛みの間隔さえ分からないし、もしかしたら陣痛じゃないかも知れない。

ただでさえ、一ヶ月前までは自宅安静の為に、病院へ行く日は仕事を休んでくれたりと迷惑をかけてる。

まだはっきりとしてない状態で伝えるのはるのは何だか申し訳ない。

それに、もし陣痛だったとしても、出産って結構時間がかかるみたいだし、定時が過ぎてから電話しても間に合うだろう。


「病院までは一人で行こう。タクシー呼べばいいんだもの」


言葉にすることで自分に言い聞かせる。

そんな風に考えているうちにお腹の痛みもおさまってきた。

今がチャンスとばかりに荷造りをする。

洗面用具と下着。
パジャマは病院からなんかでるって言ってたっけ。

化粧品……は要るのかしら、要るか。
誰かが来てくれた時すっぴんじゃ恥ずかしいもん。

あとそうだ、退院する時に着る服。
私のも赤ちゃんのもだ。

他に何かあったかな。思い付かない。

適当にカバンに突っ込んだ後、台所にあったパンを口に突っ込む。
お腹がすいても大変だもんね。

食べれるときに食べないと。


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