幸せ家族計画

「作田さん?」

「ああそうだよ。作田百合子です。ええと……」

「西崎綾乃です」

「西崎さんね。ホラここ座って。ブランケット持ってきてあげる」


作田さんは玄関に座布団やブランケット、それにストーブまで持ってきて、私の座る場所を作ってくれた。

温かい空気に緊張が緩む。
お腹の痛みは変わらないけど、温かい分体をこわばらせなくていいのが楽だ。


「すいません。もうすぐタクシーも来ると思うんですけど」

「この間から大通りからこっちに入ってくる道が工事で片側交互通行になってるんだよ。だからちょっと時間かかるのかもよ」

「そうですか」


知らなかった。
最近遠出してないからなぁ。


「でも、旦那が仕事なら、親とかに頼めなかったの?」

「親は……もう亡くなってて」

「旦那の親は?」

「彼の親も亡くなっています」

「兄弟は?」

「……いま、せん」


ちょっとドキリとする。
ここの人は誰も、私と達雄の過去について何も知らないはずなのに、なんでか後ろめたく感じてしまう。

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