幸せ家族計画

 その時、プッと表で音がした。
タクシーが到着したらしい。


「ホラ、来たみたいだ。気をつけてお行きよ。
何なら付いてってあげようか?」

「いえ、大丈夫です。……あの、嫌な事思い出させてしまったんじゃないですか? すいません」

「ああ、何だい。同情なら要らないよ。
今はね再婚したんだ。

もう一度、誰かの奥さんになれて。
ようやくこの場所のありがたみが実感してるってところかね。

アンタは失敗せずに頑張りなよ。
あの旦那、随分と過保護そうだったじゃないか。
抱き抱えそうな素振りで階段下りてくるところ、何度も見かけたよ」


そうしてくれた達雄の事を思い出して、顔が熱くなる。


「ヤダ。恥ずかしい。今度から気をつけます」

「良いんだよ。若いうちは見せつけときゃ良いじゃないか。
いい子産みなよ。生まれたら見せてもらうからね」

「はい。ありがとうございます」


休ませてもらっているうちに、痛みは落ち着いてきた。
作田さんが荷物を運んでくれ、私もタクシーに乗り込んだ。

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