幸せ家族計画
病院に着くと、まだ早いからと診察用のベッドに寝かされる。
やがて、病室の準備が出来るとそっちに移してもらえた。
「今10分間隔ですね。ご家族に連絡は? 今のうちに入れておいた方がいいですよ」
「あ、そうでした」
時間はもうすぐ6時。
もうかけても仕事に差し障りはないだろう。
携帯電話を鳴らして3コールもしないうちに電話が繋がる。
『もしもし、綾乃?』
「わ、早くない。でるの」
『すぐ取れるようなところに置いてるんだ。何かあったのか?』
「えっとね。陣痛がきたから病院に居るの。今10分間隔」
一瞬沈黙になる。
あれ? 聞こえなかった?
『なんで、今頃言うんだ?』
「だってお仕事中だと思って。……あ、また来たかも。痛……」
びっくりした拍子に陣痛までもがやってくる。
最初はそれほどでもなかった痛みも、回を重ねる度に増してきて、今では例えようもないほど苦しい。
『アヤ、大丈夫か? すぐ行くから待ってろ』
私の荒い呼吸が聞こえたのか、達雄は今度は焦った声音になり電話を切った。
私はそのまま横になる。
何かを握っていないと痛みを我慢できなくて、
ベッドの手すりを握り締めた。