幸せ家族計画

「……ちょっとおさまって来た」


手すりを握り締めていた手を離して、ふうと息をつく。
達雄は先ほどのタオルで私の額の汗を拭いてくれる。

そして、ようやく落ち着いたように椅子を持ってきて私のベッドの脇に座った。


「びっくりしたよ。なんですぐ教えてくれなかったんだ」

「だって。まだ仕事中だったし。そんなすぐには生まれないもん」

「……頼むよ」


神妙な顔になって、私と額を合わせる。

ちょっとここ病院ですけど。
さっきからせわしなく看護師さんや助産師さんも歩きまわってるんですけど。
こんなとこ見られたら恥ずかしいじゃない。

そんな私の想いに気づくこともなく、
達雄は大きく一つ溜息をつくと肩に手を乗せて私を抱き寄せた。


「俺の人生の8割は綾乃で構築されてるんだからな。
お前が居なくなったら、俺の一生台無しだ」

「……大袈裟」

「大袈裟じゃなくて本気で」


そんな風に言われたら、ちょっと胸がジーンとしちゃうじゃない。

私、何にも出来ない訳じゃないのかな。
達雄にとって、ちゃんと必要な人なの?

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