幸せ家族計画
ようやく病室に移って、初めての授乳に四苦八苦したものの、なんとか飲ますことが出来てキズナは眠った。
「時間にして7時間の陣痛。よく頑張ったな、綾乃」
「うん」
褒められると嬉しい。
大変だったけど、良かったなって思える。
普通の声で話すとキズナを起こしてしまいそうな気がして、私たちは身を寄せ合って、小さな声で話しあった。
「……俺、なんか親父の事思い出したよ」
「お父さんのこと?」
「ああ、アヤが生まれる時さ。俺が学校から帰ってきたら、おふくろが腹痛いって言ってて。
で、俺がタクシー呼んで二人で病院来たんだ。
その頃って携帯もないだろう?
親父の会社に電話するのにすごくドキドキしたんだよな」
遠くを見るような眼差しを、彼は私に向ける。
今彼が見ているのは、記憶の中の母の姿だろうか。