幸せ家族計画
「……英治くん。大丈夫よ?」
気配を感じ取ったのか、ベッドの上の紗彩がそう言った。
途端に我に返って、指先が書き慣れた名前をなぞり始めた。
きちんと刻まれた自分の名前。
それを確認して医師に返す。
「では、手術の準備にかかります」
その途端、周りは慌ただしく動き始めた。
準備が出来たのは1時間ほど後だったろうか。
駆けつけてくれた俺の父親と紗彩の両親が見守る中で、紗彩は手術室へと入っていく。
寸前に手を握って「頑張れよ」と告げる。
弱々しい顔で、それでも笑ってくれた紗彩を見て安堵の息が出た。
不安も受け止めてやるなんて言った割には、励まされているのは俺の方だ。