幸せ家族計画

 手術にかかる時間は、およそ1時間。

俺はその時間を、手術室の前の廊下にある椅子の上でサユの手を握りながら過ごした。

紗彩のおふくろさんが、気を利かせておにぎりを作ってきてくれていて、俺とサユはそれを一つずつ食べる。

腹が膨れたサユは、疲れきってもいたのだろう。
時折りウトウトとしては、ハッと我に返って頭を振るということを繰り返す。

俺は手に汗を握る思いで、ただただ手術中のランプを睨みつけていた。


やがて、聞こえてきた産声。

先に赤ん坊の方が保育器にいれられた状態で出てくる。


「男の子ですよ。母子ともに健康です。一晩保育器にいれますね」


そう言って一瞬だけ見せてもらい、またすぐ連れて行かれてしまう。

そのうちに今度は紗彩がベッドに眠ったまま出てきた。
痛みを堪えていた時と違い、肌が妙に白く見える。
けれども、浅く上下する胸元は確かに紗彩の脈動を伝えてくれて、緊張していた自分の体が緩んでくるのが分かった。

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