幸せ家族計画
不意に、頭を包まれた。
目の前にはサユの服が見える。
サユが、座っている俺の頭を包みこむように抱きしめていた。
「サユ……」
「お父さん、見られたくないんでしょ?」
「ああ。……はは。ごめん。もう大丈夫だ。
サユを支えてやるっていった癖に、どっちが支えられてんだかわからないな」
腕で濡れている頬をひと吹きする。
泣いたのなんて久しぶりだから、視界のゆがみに違和感を感じる。
「ママには内緒な?」
人差し指を立ててサユにそうお願いすると、驚いたようにまじまじと俺を見る。
「えー、どうして? ママ喜ぶんじゃない? お父さんが心配してたの分かったら」
「喜ばなくてもいいの。恥ずかしいから。頼むよ、サユ」
「うーん。じゃあ頑張る。内緒にするのね?」
「そう。今度サユの欲しい本でも買ってやるから」
「やったー!」
両手を伸ばして、ぴょんと跳ねる。
その背中を押して、病室へ向かった。