幸せ家族計画
途中、新生児室を覗くと、保育器に入った赤ん坊の姿が見える。
あれがうちの子だな。
「彩治(さいじ)くんでいいんだよね?」
「そう。彩治」
「サイちゃんって呼ぼうかな、わたし」
「良いんじゃない?」
サユの頭を撫でてそのまま歩きだす。
すると病室の手前で再びサユが口を開いた。
「……ママのことも、お母さんって呼ぼうかな」
「え?」
思わず扉に伸ばした手が止まってしまう。
サユは俺と目が合うとにっこり笑った。
「だって、お父さんとペアになるのはお母さんでしょ?」
「そりゃ……まあそうだけど。だって……」
サユにとってはパパが居た上での"ママ"だったんじゃないのか?
「ママはそろそろ、お母さんの方が似合うと思う」
サユが、どこまでの意図を持って、そんな事を言ったのかは分からない。
だけど俺は、
ユウさんへの罪悪感と、それ以上の嬉しさが胸に湧き上がってきて。
再び込み上げてくるものを、抑えることが出来なくなった。