幸せ家族計画
「じゃあ、気をつけて帰ってください。
紗彩にはちゃんと言っておきます」
「ああ。また明日見にくるよ」
2人を玄関まで見送ると、親父も所在なげについてくる。
「俺も帰るな。英治、おめでとう。ついに父親だな」
「父親にはもう前からなってる。俺は、紗彩と結婚した時からもうサユの父親だから」
俺の言葉に、サユは嬉しそうにひっついてきて、親父は困ったように頭をかく。
「ああ、そうか。そうだな。はは。これは一本とられた」
そして、背中を向け歩き出した。
がっしりとした体つきはしているが、少し背中が曲がるようになってきたな。
首元にも結構皺がある。
親父も老けたな。
そして俺も、年をとったんだよな。
こんな風に気持ちが変わっていくんだから。
「親父」
顔を見ていては言えなかったことを、そこでようやく口に出せた。
「ん?」
「俺、おふくろの事ようやく許せそうだ」
驚いたような眼差しが俺をとらえる。
そしてますます皺の深くなるような笑みを作った。