幸せ家族計画
「はは。まだ許してなかったのか」
「案外頑固でね」
「紗彩さんにお礼言わないとな」
「それはいい。俺が自分でいうから」
「そうか。……なぁ、英治」
「ん?」
「お前、幸せそうだなぁ」
少し自嘲の念がこもったような笑顔で、ポツリとそう漏らす。
「幸せだよ。昔も、……別に不幸じゃなかった。ただ、今の方がより幸せだってだけだ」
「そっか。ならいい」
手をひらひらと振って、親父の背中は小さくなっていった。
何故か見届けなくてはいけないような気がして、俺は親父が車の列にまぎれて見えなくなるまでずっとその場を離れる事が出来なかった。