幸せ家族計画

「アヤ。……抱いていい?」

「た、達雄」

「俺が自分でできる事は何でもする。キズナの世話もいくらでも代わる。
でも、アヤに触れられないのはキツイ。夜も一緒に寝たい。起こされたって別にいいんだ。
綾乃の体温がないと落ち着かないんだよ……」


そこまで一気に言ったかと思うと、抱きしめられたまま居間に連れて来られ、座布団の上に下ろされる。


「……ダメか?」

「う、ううん」


降りきれそうな勢いで首を振る。

すると彼は安心したように、唇を重ねてきた。


「昔は触れなくても我慢できたのになぁ」

「え、あ、……んっ」


エプロンの結び目が解かれて、手早く奪い取られる。

それを目隠しみたいに顔の上に乗せられて、もがいているうちにリビングの電気が消えた。

最初はゆっくり唇を貪っていた彼が、やがて体中を撫で始める。

テレビの音だけが響く室内で、小さく漏れだす私の吐息。

彼の筋肉質の腕が私を包む。
キズナを抱くより、ずっと強く。

大きな声を出したら、起きちゃうんじゃないかと思って、私は必死に声を噛み殺していた。

でも、彼の肌が直に触れた時、自分も不思議と安心した。


そうだ。

私だって、このぬくもりが欲しかったんだ。


< 375 / 419 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop