幸せ家族計画
主に手紙でしか連絡を取り合わない実母から『おめでとう』の手紙とプレゼントとおぼしき箱が届いたのは、5月の頭の事だ。
俺の誕生日である4月17日に例年通りの手紙が届き、その返事でようやく子供が生まれたことを告げた。
今回のは、それの返事に当たる。
俺が3歳のときに、育児ノイローゼが元で男と家を出た母。
そんな母を、俺は別に恨んではいない。
いや、正確に言えば興味がなかった。
母がいなくて不便なことは多々あったが、代わりに口やかましいことを言われることもなく、学生時代は好きなように暮らせた。
総括的に見て、プラスマイナスゼロってところだろうと思っていた。
俺が、母親に対して苛立ちの感情が湧くようになったきっかけはむしろ、多感な時期を終えた頃にひょっこりと手紙をよこすようになったことだった。
最初に手紙を貰ったのが、30歳の誕生日。
今更『会いたい』なんて、虫のいいことを言われたことに苛立った。
返事もせずに放置していたのに、それから手紙は毎年のように送られてきた。
募る苛立ちと共に、どこかで感じる恋慕。
それを認めるのが嫌だった。