幸せ家族計画
そんな俺の意識を変えたのは、紗彩の存在だ。
『母親』というものがどれだけ精神的に大変なものなのか、シングルマザーだった紗彩がその姿を持って俺に示してくれた。
紗彩と一緒になら、母に会えるかもしれない。
そう思えるくらい心境は変化した。
そのとき俺が恨み言を言うのか、それとも体の良いような言葉で母を許すのか、自分でも想像もつかなかったけれど。
そして実際会ってみて、結果俺は本心を吐き出した。自分でもじっくり考えたことのなかった本心だ。
紗彩に促されて、それがこぼれ出た。
それが良かったのか悪かったのか、結論つけることは難しいけれど、それ以来俺と母との関係が変わったのは間違いない。
こうして手紙をやり取りできる程度の親密さを取り戻した。
そして俺は今回の紗彩の出産で、ようやくおふくろへのわだかまりがなくなった、と自分では思っているのだが。
それを伝えるのはやっぱり気恥ずかしくて。
俺にしては珍しく、出産の報告さえ今頃になってしまったという訳なのだ。