幸せ家族計画


「……お礼の電話をしたら?」

「電話か? でも……」

「携帯電話の番号も聞いてるんでしょう? そこまであちらのご家庭を気にすることはないと思うわ」

「手紙でするよ」

「電話の方が良いわよ。文字だけでは伝わらないこともあるわ。英治くんがしないなら私がするけど」

「……いや、いいよ。俺が言う」


正直言えば気は乗らない。
お袋と直接話すのは、何故か気がひける。

それは実際に一緒に暮らした期間が短すぎるからなのかどうか、その辺りは分からないけれど。


 俺は彩治の頭をさっと撫でて、和室を出る。
なんとなく誰にも聞かれたくない。

サユは今日は遊びに出ているからしばらく帰ってこないし、今がチャンスといえばチャンスか。

一番落ち着く場所を探して、ベランダに行き着く。
俺の喫煙コーナーだ。

携帯の電話帳から『母』と登録された番号を見つけ出す。


「ゴホン」


自然に出てくる咳払い。
なんだ、俺、緊張してんのかな。

呼び出し音が鳴っている間、落ち着かなくてベランダの桟をなぞる。

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