幸せ家族計画


『もしもし、英治?』

「か、母さん?」


うわ。声がうわずった。
何か調子狂うな。こういうのがイヤなんだよな。


「あの、服届いて。……ありがとう」

『サイズ大丈夫だったかしら』

「すぐ着れるから嬉しいって、紗彩が」

『そう、良かった』


ほう、という音は安堵の息だろうか。


「そっちどう? 変わりない」

『ええ。ありがとう。特に何も変わりないわ』


当たり障りのない会話を続けて、適当なところで終わらせて切ってしまえばいい……と思うのに、何故か切れない。


『……サユちゃんは元気?』

「うん。サユは、すっかり姉貴気分で楽しそうだ」

『ふふ。可愛いわね』


耳元に聞こえる母親の声はやけに落ち着いていて。
こんな人が育児ノイローゼとはいえ子供を置いて男とでていくものなのか、と疑問さえ抱いてしまう。

それは幼かった俺のせいなのか? と思うと胸の奥が少し苦しい。

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