幸せ家族計画
「ちょっと……聞きたいことがあるんだけど」
『え? なに?』
「母さんは、どうして育児ノイローゼになったんだ?」
『……』
電波の向こうで絶句しているのが分かる。
ああ、聞き方が悪いんだよな。
別に傷つけたい訳じゃない。そうじゃないんだ。
「責めてる訳じゃなくて。ただあの、紗彩もいつかそうなったら困るなって思って」
『……紗彩さんは大丈夫よ。しっかりしてるもの』
「しっかりしすぎててさ。俺もどう手伝って良いか分からなくて困ってんだよ」
『あら。……ふふ。そうなの?』
やっと笑ったな。
ちょっとほっとする。
もしかしたら俺は、自分の言葉でこの人を傷つけるのが怖いのかな。
お袋は、しばらく沈黙した後ポツリと言った。
『きっかけらしいきっかけなんてないのよ』
「え?」
『ある日突然、プチンって糸が切れたみたいに色んなことがイヤになったの』
「……」