幸せ家族計画

 電話を切り和室に再び戻ると、彩治は布団の上に転がり、紗彩は左手にガラガラ、右手にカメラを持っていた。


「何してんだ」

「え? せっかくだからこのお洋服着せて写真とろうかと思って。そうだ。英治くんが抱っこしてよ」

「いや、俺は良いよ」

「だって、お義母さんに送るのよ?」

「俺の顔なんて見たくないよ、きっと」


そう言うと、紗彩の顔が悲しそうにゆがむ。
うわ、その顔はやめて欲しい。反則だ。


「そんなことないわ。見たいわよ、きっと」

「わかった。そうだな。頼むからそうやって責めるような目で見るのは止めてくれ」

「責めてる訳じゃないわよ」


ケンカみたいになっていくのがイヤで、紗彩を手招きで呼ぶ。
おずおずと傍に来る彼女を抱きしめて、目元にキスをした。


「……子供の前でやめて」

「赤ん坊が見て何が分かるよ」

「だって」


何度かキスをしていると、やがて反論の声も小さくなる。

紗彩の、こういうところが堪らない。


< 388 / 419 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop