幸せ家族計画


「あんまりうるさくすると近所迷惑だし」


ため息と共に綾乃が一言。
そうだな、主婦はご近所づきあいは気になるよな。

美容院にも行けず、伸びたままにしている髪が顔の周りに張り付いている。
肉体的にも疲れてはいるのだろうが、見た目が老け込んで見えるのは精神的なものだろう。


「アヤが一人のときにちょっとキズナを避難させるような子供用サークルでも買おうか」

「うーん。でも、アパートそんなに広くないからなぁ。それに、何か閉じ込めてるみたいで落ち着かない」

「でも、アヤが疲れてちゃキズナだって辛いわけで」

「でも。このくらいで疲れたなんていえない。専業主婦だもん。それに……」


この言葉が出ると、俺も次の句が告げない。

専業主婦になることを望んだのは俺だ。
その俺の言動が綾乃を縛ってしまったのかと思うとなんだか申し訳ない。

せめて綾乃の気を楽にしてやれるようなことを言えればいいんだが。


「専業主婦だからこそ、息抜きが必要なんじゃないのか?」

「……そう?」

「そうだよ。天気もいいし、どこか行こうぜ」

「そう、だね。うん。そうしようか」


綾乃が乗り気になったところで準備を始める。

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