幸せ家族計画
「……家を、売ろうかと思う」
「え?」
驚いたように、目を見開く綾乃。
「キズナのために、家が欲しい。
さすがに近所の目があるから、前の場所には住めないだろ?
でも家を手に入れるには金がないと無理だ。そのために売ろうと思ってる」
「達雄」
「親父とおふくろの思い出の家だ。悪いとは思ってる。
でも、俺はこれから家族が楽しく暮らせる家を持ちたい」
綾乃に、というよりは墓にいる両親に告げる。
しばらくの沈黙。
キズナが時折奇声を上げるのが妙に雰囲気に合わず笑い出しそうになる。
「……いいと思う。というか、達雄の決断ならお母さん納得すると思うよ」
「アヤ?」
「いつだって、達雄のこと信用してた。私なんかよりずっと。お母さんの口癖知ってる? 『達雄がいるから安心だ』って。私、会うたびにそう聞かされてた」
「俺にはそんなこと言ってなかったぞ?」
「そうなの? じゃあ、達雄知らなかったんだ」
“お母さんが、達雄の存在にどれほど救われてたのか”
そう続ける綾乃の言葉に、迂闊にも涙が出てくる。