幸せ家族計画
「さ、ご飯つくろう。紗優、暇なら手伝ってくれる?」
「いいよ。今日は何?」
「お父さんの好きな生姜焼き」
「わーい、おいしそう!」
浮かれた声でお母さんと一緒にキッチンへ向かう。
いじけたような曲がった背中を見せつつ、ちらちらとこちらをうかがうサイちゃんが可愛い。
「サイちゃん、お箸並べて」って言うと、すぐに機嫌を直して動き出す。
やがて部屋中にいい匂いが漂い出した頃、玄関の扉が開く。
お父さんのお帰りだ。
背が高くて、肩幅も広くて、前向きで優しいお父さん。
お母さんの運命の人。
「ただいま、今日何? 旨そうな匂い」
その笑顔に、お母さんの顔がほころぶ。
娘の私から見ても、お父さんの前にいる時のお母さんは可愛い。
なんか凄く、女の子っぽくなるの。
ニヤニヤして二人を見ていると、ハッと気付いたようにお母さんが我に返る。
慌ててすました顔したって遅いんだから。
「お父さん、私の作文勝手に持ち出さないでよー。
もう捨てちゃおうかな。あれ」
「ちょっ、それはダメだ。
捨てるくらいなら俺にくれ。
良いじゃないか。
娘に『お父さんと結婚したい』って言われるのは父親の夢だぞ」
「それをずっと言われ続けるのは娘にとっては苦痛だもん」