幸せ家族計画
静かに覗くと、彼が位牌の前に正座していた。
眼差しはどこか真剣で、背筋がピンと伸びている。
見ているこっちも何だか姿勢を正してしまいそうなほど。
まだ乾いていない髪のまま、半袖のTシャツで首にタオルをかけている。
いつまでもそのままじゃ風邪をひいちゃう。
「羨ましいって言ったら失礼だよなぁ」
ポツリと彼は言い、驚いてる私に笑顔を見せた。
「気付いてたの?」
「うん。こっちおいでよ」
手招きされて、彼の傍に寄る。
お線香があげられていて、小さなろうそくが揺れている。
「死んだ人間に対して、こんなことを思うのはずるいよなぁ」
「こんなことって?」
見上げても、彼は位牌を見つめたまま顔を動かさない。
いつもなら、こちらを見て緩く微笑むのに、横顔だとすごく遠い気分になる。