幸せ家族計画


「英治くん」

「俺の絶対に手に入れられない紗彩を、彼は持ってるんだよなぁって思って」

「……」

「何だか羨ましくなった」


あまり過去を振り返らない彼が、こういうことを言うのはすごく珍しい。
何を言ったらいいか分からなくて、ただただ黙っていることしかできなかった。


「嫉妬ってあんまりした事ないからな、どう考えていいのかよくわからない」


ポツリ、吐きだした彼の言葉に、ロウソクの火が揺れる。

私の心臓も何だか同じように揺れた。

なんか言いようがないけど、嬉しくて、でも不安で心細い。


「その頃の私を、あなたが好きになるとは思えないけど」


少し震える声でそう言った私を、彼は驚いたように見つめる。

例えば昔の私なら、こんな彼の眼差しを受け止めきれずにそらしてしまうだろう。
でも今は違う。

その視線に笑顔を返せる。

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