幸せ家族計画
そのまま携帯で自宅にかけると、妻の穏やかな声が聞こえてきた。
『はい。英治くん?』
「あのさ、達雄が話があるって言うんで、ちょっと飲んできてもいいかな?」
『いいわよ。金曜だしゆっくりしてこれば?』
「サユに代わって」
『ええ』
愛しい妻の声が遠ざかり、愛しい娘の元気な声に変わる。
『おとうさーん』
「サユ? ごめんな。おとうさん、ちょっと遅くなるから。ママの言うこと聞いてちゃんと寝ろよ?」
『うん。ねぇ明日はお休み?』
「休みだよ」
『晴れたらキャッチボール!』
「はは。分かったよ。じゃあな、お休み」
『うん、じゃあねー』
そのまま電話が切れる。
妻と娘の声は、俺の元気の元だ。
思えば自分がこんな家庭人間になれるなんて思わなかった。
紗彩の影響も大きいけど、何よりサユが偉大だ。
子供があんなに可愛いなんて、あの子に会わなかったら思わなかっただろう。
「じゃあ行くか」
独り言をつぶやいて、再び駅へと歩き出す。