幸せ家族計画
少しの沈黙を作ると、達雄は途端に黙る。
常に自分の発言を振りかえり、
相手にどう思われたかを考える。
それは、受けた愛情に常に疑いを持っている男の行動だ。
養子だったという過去は、本人が思っている以上に当人の中に根付いている。
顔を崩して微笑むと、達雄は安堵の表情を浮かべる。
その瞬間を逃さずに、一言発した。
「帰れば?」
「……うん」
簡単に頷いて、達雄は残りのウーロン茶を飲みほして、立ちあがる。
「お前はどうする?」
「俺はなんか腹膨らませてから帰る。夕飯いらないって言っちゃったしな」
「そうですねぇ。折角ですから演奏も聴いていって頂きたいです」
ずっと無言を通していたオーナーからももっともな意見。
確かに、週末にここにきてあのピアニストの演奏を堪能しないのは損だ。