幸せ家族計画
「相川さん、こんな時の気の利いたセリフってなんか無いですかね」
達雄の向こうの作家先生に問いかける。
彼は端正な顔を傾けて、一瞬空想の世界へ遊びに行く。
「そうだねぇ……」
そして何か思い付いたのか、嬉しそうに笑う。
「『俺が贈ったプレゼントを10ヵ月後に見せてほしい』……とかはどう?」
「おお」
さすが作家。
子供はプレゼントか。
玄関のドアを開けた時の、サユの笑顔を思い出す。
確かに。
自分の母親の事を思い起こせば、
単純に子供が可愛いだけのものだとは言えないけど。
少なくとも今の俺にとっては、サユは宝物みたいなもんだ。
自分の子でなくてもこうなんだ。
それが血のつながった子供ならば、どれ程嬉しいものなんだろう。
図らずも感激してしまった俺の横で、達雄がうなだれる。