幸せ家族計画
「……俺も、帰ります。オーナーによろしく。いい演奏でしたって」
「ああ。伝えとくよ」
作家先生に挨拶をして、出入り口に向かうと、若いウェイターが気付いて会計をしてくれた。
流れるようなピアノの旋律に、後ろ髪はひかれるけど、
何故だかとても紗彩に会いたくなったから、今日は帰ろう。
笑わずに、聞いてくれるだろうか。
もし叶うなら、もう一つ宝物が欲しくなった、なんて。
まあでも。
紗彩になら、笑われてもいいか。
そんな事を思いながら、足早に駅へと向かった。
【fin.】