幸せ家族計画
お湯の熱さで、肌がピンク色に変わる頃、浴室の扉が大きく開かれた。
「……アヤっ」
焦ったような顔の達雄に、私の方がビックリする。
「何っ? 達雄!」
「いた。……起きたらいないから、驚いた」
「どこにも行く訳ないでしょ?」
浴槽から笑うと、苦笑して座りこむ彼。
多分、後から起きたのが私なら、きっと同じように彼を捜すんだろう。
これが私たちの間にはびこる不安。
それをどうすれば消すことができるのか、
答えが分からないから、今は蓋をすることしかできない。
「開けっぱなし寒いよ」
「……あ! 悪い」
「もうすぐ出るから待ってて」
「俺も一緒に入ろうかな」
珍しくそんな事を言うから、ちょっと笑ってしまった。
だけど結局、達雄はそのまま浴室を出て、
私が出た後で入っていった。
*