魔天戦史
八洲は肩を震わせている。勇翔達は静かに部屋を出た。それと同時に八洲が耐え兼ねていた様に泣く声が聞こえた。勇翔達は音をたてない様に部屋を離れた。

「あ、僕部屋に戻ります。」

「…そうか。」

緋凰達は静かに廊下を歩いて行った。部屋に戻ってから、勇翔は壁を思いっ切り殴った。そのまま力無く壁に向かって倒れた。

「…くそッ…!くそッ、くそッ…!!」

勇翔は握り締めた拳に更に力を込めた。顔を一筋の涙が伝い落ちる。

「…もっと、力があれば…こんなことには…!!」

勇翔は堪えていたものを少しだけだした。

「…うぅッ…うあぁぁぁッ!!」

勇翔は、自分の力の無さが憎くなった。





それから数時間して、黒服の男が勇翔を呼びに来た。拾蔵が呼んでいるそうだ。勇翔は部屋を出て拾蔵の部屋に向かった。

「拾蔵様、勇翔です。」
襖の前でそう言うと、中から返事が返ってきた。

「おぉ、入りたまえ。」
勇翔はそう言われて中に入った。中には敵の殲滅を終えたのであろうクロームとレオン、それに緋凰がいた。

「…大丈夫かね?」

「…はい…」

正直、大丈夫では無かったのだが、そう言う訳にも行かなかった。
「今から、君には緋凰とクロームとレオンと一緒に蒼天研究所に向かって貰いたい。」

「蒼天研究所…?」

「あぁ。そこが何者かに占拠されてしまった様でのぉ。その研究所を奪還して欲しいのじゃ。」

「どうして、僕に…」

「これは統合軍からの指令でのぉ。正規の軍人でなければいかんのじゃよ。」

「…分かりました。」

「では、準備が終わったら玄関に来い。」

「はい。」

勇翔は部屋を出て自分の部屋に戻った。それから拾蔵の部下が運転する車に乗って研究所に向かった。これが、後に勇翔にとって初めての正規の任務となる。
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