魔天戦史
「…しかし、これ程設備が充実しているとはな…」

部屋の真ん中まで来た時、勇翔は床に違和感を感じた。

「跳びなさい!勇翔殿!」

勇翔はとっさにバロンの言葉通りジャンプした。するとクローム達を中心に魔方陣が広がった。勇翔は魔方陣の外に降りた。

「な…ッ!?」

三人は足が接着された様に動けない。

「これは…!?勇翔!逃げろ!!」

レオンが勇翔に向けて叫んだ。

「残念…」

しかし勇翔は避けることも出来ずに吹き飛ばされて壁に叩き付けられた。そこに光る槍の様なものがどこからか飛来して勇翔を壁に突き刺した。

「ぐ、げほッ…!?」

勇翔は口から血を吐いた。床には血溜まりが出来た。

「勇翔!!」

レオンは動きたくても動けない。そこに誰かがやって来た。

「まさか元帥二人に特務隊長が揃っていらっしゃるとは…」

三人が一斉に振り返った。そこには白衣を纏った体格の細い男が光る槍を握って立っていた。

「しかし、捕縛陣を避ける人間がいるとは…ちょうど研究材料が尽きかけていたところだ。どれ、まずは君から解体するとしようか…入念にね…」

男は不気味な笑みを浮かべながら勇翔に近付いた。レオンは何とか動く右手で霊力の塊を男に向けて撃った。しかし満足に集めきれなかった霊力の塊は男の槍に弾かれてしまった。男はゆっくりと振り返った。

「…良いだろう。まずは君達からだ…」

男はゆっくりとレオン達に近付いた。

「…止めろ…!」

勇翔はそれだけを何とか絞り出した。

「安心したまえ。君も後でゆっくりと解体してあげるから…そうだな。貴重な人材を無駄にするのも忍びない。君達にも、私の研究材料になって貰うとしよう。」

男は槍をレオンに向けた。

「そこで見ているといい。無力な者の末路をね…」

男は槍を振り上げた。
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