魔天戦史
「…それは…どういう…」

その時、辺りの風景に一瞬ノイズの様なものが走った。

「!?今のは…」

「どうやら、時間の様じゃのぉ。」

「時間?」

「さぁ、現実の世界に戻るがいい。」

「お祖父様は…」

「儂は、この世界でしか生きられぬ。」

「それは、一体…」

「今の儂は、あくまでもこの世界の中での存在じゃ。現実の世界での儂が作り出した、幻影なんじゃよ。」

そういう拾蔵の体にもノイズが走った。

「…そんな…」

「…さぁ、もう行け。あまり、人のこんな姿を見るものでは無いぞ?」

「…ありがとう…ございました…ッ!」

京介は頭を下げた。その姿はもうかすんでいた。

「…あぁ。達者でな。」
京介は最後にその言葉を聞いてその世界から消えた。








「…戻った様じゃな。」
拾蔵が閉じていたまぶたを開けると拾蔵の前に京介が突然現われた。

「…習得出来た様じゃな。」

「…はい…」

京介はあまり元気が無い。しかし拾蔵にはその理由は分かっていた。

「…あの世界の儂は、今でも儂の中におる。心配するな。」

「!…はい…」

「…さぁ、中に戻ろう。疲れたじゃろ。彰奈さんに昼ご飯を用意して貰っておる。」

「はい…!」

京介は拾蔵の後に付いて行った。付いて行った先では、彰奈が大量のご飯を作って待っていた。そこには何故か悠里も一緒にいた。聞くとどうやら彰奈が呼んだ様だ。テーブルにはもう勇翔と晶が付いていた。隣りの大部屋では黒服達が宴会の様な騒ぎをしている。そこに同じく修行を終えたのか蓮と弦慈郎がやって来た。四人は席に付いた。

「さぁ、戴こうかの。」
「はあ、どんどん召し上がって下さい!」

「いただきます!」

全員で一斉に昼食をとった。師紀邸を久し振りに穏やかな空気が包み込んでいた。
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