魔天戦史
窮極魔法
「……エンシェント・アーツ……ですか?」
「そうだ。悠久の時を生きた聖霊は、自らの魂を触媒にして、強力な魔法を扱える様になる。それがエンシェント・アーツだ」
「その聖霊は、例えば……師紀元帥のゼウスとかですか?」
「そうだな。厳密に言えば、特A以上の聖霊の三分の一程度は会得している。かく言う私の不動明王もそうだ。レオンのタナトスの『四騎士』もエンシェント・アーツだ」
「そうなんですか……でも、僕の聖霊はそんな凄い魔法は……」
「何を言ってるんだ。青龍は特Aランクの聖霊なんだぞ?覚えていないはずがなかろう」
「え、そうだったんですか?」
「………おい、どういうことだレオン?」
緋凰は勇翔に視線を向けたまま後ろのレオンに声をかけた。
「……申し訳ありません……話す機会が無かったので……」
「………まぁ、仕方ないな。ならば今覚えておきなさい。君の聖霊、青龍は特Aランク。そしてバロンはAランクの聖霊だ。どちらも強力な力を持っているが、力を引き出せなければ意味は無い」
「は、はい!」
「……良い返事だ。ならば、まずはエンシェント・アーツがどんなものか知ることが大事だな。私のものを見せよう。しっかり見てるんだぞ?」
緋凰はその場で右手を前に出した。
『……深淵の淵よりいでし断魔の龍よ…そは、全てを滅せし護法の黒炎……』
緋凰は静かに、滑らかな口調で呪文らしきものを唱え始めた。
すると、その右手に黒い炎が集まってきていた。
『来い、倶利伽羅剣!!』
緋凰は黒い炎に包まれた右手を高く頭上に突き出した。