魔天戦史
その右手から吹き上がった黒炎は、一匹の龍となって緋凰の右手に巻き付き、その龍が、一振りの剣になった。
「浄化の黒剣……倶利伽羅剣……!!三大霊剣の一振り…この目で見られるとは……」
「……エンシェント・アーツの中でも最強を誇る倶利伽羅剣……並の霊力ではありませんね……」
レオンとアルバーヌはその霊剣に見入っている。
真正面から向き合っている勇翔は、全身を引き裂かれるかの様な錯覚を覚える程に圧倒されていた。
「な………これが、霊剣……ッ!?」
その黒炎を纏う霊剣は、神聖さとは程遠い………
「……まるで……魔剣……」
「そうだな……倶利伽羅剣は確かに魔剣に近いかも知れんな……だがな、勇翔君……守る為には、奪わなければならないのだよ……それが、戦場の掟だ…」
「戦場の…掟……」
勇翔が緋凰の言葉に惚けていると、ビル全体に響き渡る程の警報が鳴り響いた。
「……敵か……丁度いい。レオン、アルバーヌ。勇翔君を連れて屋上へ行け」
「緋凰様は、どうなさるのですか?」
部屋を出ようとドアに手をかけた緋凰は静かに振り返った。
「私一人で十分だ……勇翔君、良く見ていろ」
緋凰は部屋を出て行った。
「……行こう、アルバーヌ、勇翔君……」
「………は、はい……」
勇翔は二人に連れられてビルの屋上に向かった。
「………管制室、聞こえるか?」
「はい、緋凰様」
「警報を切ってくれ。私が一人で出る」
「了解しました。お気を付けて」
「……これが、戦場の掟だ、勇翔君……君はまだまだ子供だよ……」