魔天戦史
「……私も名前は聞いたことはありますが、意外にお若いんですね……」
「……彼は今年でもう四十代後半のはずだが……」
「………え………?」
レオンの目には、高城博士はどう見ても三十代にしか見えなかった。
「彼は十六年前の『北中戦争』の時に国連派遣軍として従軍している。その時に確か三十代だったはずだ」
「北中戦争……北朝鮮の核ミサイル配備に端を発した中国との戦争……」
「そうだ。高城博士は北中戦争に少佐として従軍していた。彼の指揮する部隊は多大な戦果を挙げ、北朝鮮政府が無条件降伏を受け入れるまでの二年半の間を戦い抜いた。本人も優秀な兵士だったからな……」
「昔の話さ、特務隊長殿。聞き流してくれて結構ですぜ?」
その声は高城博士だった。
「用意が出来た。行きましょう。後は頼む。マニュアル通りにな」
「はい」
二人は高城博士に促されて別の部屋に移動した。
そこは整頓の行き届いた綺麗な部屋だった。
扉のプレートには『所長室』と書かれていたから、この部屋は高城博士の部屋なんだな……とレオンが考えながら部屋を見ていると、高城博士が声をかけた。
「ご依頼の品は、完成してますよ……」
「………依頼…ですか?」
「……おや、ご存じ無い?おかしいな……確かに大元帥様からご依頼を受けたのだが……まぁ、良い。確認は後でそちらでしてくれ。これが、依頼された品………」
高城博士は机の引き出しから紅い箱を出してレオンに渡した。
「……失礼します……」
レオンは箱を開けた。