魔天戦史
「………ソル……」
ジャックがソルと呼んだその男は、オールバックにした深茶色の髪にレインコートを着た男だった。
「………まさかこんな日が来るなんて………『デュラハン』頭目、ソル・アルファディオ……!!」
「フィル・リトアス、か……未だに聖戦の傷跡から脱却出来んらしいな……憐れなことだ………」
「……憐れ…だって………?」
「……カイ、任務は終了だ。急ぎ本部に帰還し………」
「誰が…憐れだって………ッ!貴様らに、同情されたくなんて無いんだよ……ッ!!」
フィルは堰を切ったかの様に叫びながら、ソルに向けて突撃した。
「!ソル……ッ!?」
フィルを止めようとカイが構えたが、そんなカイをソルが片手で制した。
「……俺が止めよう…」
「ソル……」
「舐めるなぁ……ッ!!」
フィルはゲイ・ボルグを突き出した。
「…唸れ、カラドボルグ……ッ!」
ソルがそう呟くと、いつの間にかゲイ・ボルグは遥か後方に弾き飛ばされ、フィル自身も吹き飛ばされた。着地したフィルは尚もソルを睨み付けている。
ソルの右手には、いつ抜いたのか一振りの剣が握られていた。
「……馬鹿な………」
「…立ち去れ、聖戦の亡霊よ。それとも、この場で大地の贄となりたいか?」
「………クソ……ッ!」
フィルはゲイ・ボルグを回収して下水道を走って行った。
ソルは剣を鞘に納めた。
「……帰還するぞ、カイ……クイーンオブハートの手掛かりを見つけた。本部に帰還し、至急調査しなくてはならない」
「……了解した………」
二人は音を立てずに暗い下水道へと姿を消した。