魔天戦史


「そ、そんな凄い立場なんかじゃないですよ……!!」



「特佐という階級は、大元帥様の勅命のみに従い、軍内部の秩序を維持することを至上の命題とする階級です。そして、場合によっては自己の判断で事態を処理することも容認されている特別な階級なんですよ……貴方は、その特佐の最上級…上級特佐に任命されたのですから、その責任は重大ですよ?」



メタトロンの話を聞いている内に、勇翔はどんどん気分が沈んでいった。


「……ですが、自己の判断で事態を処理できるということは、貴方が守るべきものだと思ったものを守れるということ……」


「……え………?」


「大元帥様は、貴方の意思を汲み取って下さったのではありませんか?」


「………そうかも知れませんね……」



勇翔がうなだれていると、誰かが勇翔の袖を引っ張った。振り返ると、ドミニオンが勇翔を見つめていた。


「ど、どうしたの、ドミニオン君…?」


「………他も……見たい………」


「え!あ、ゴメン……そうだね……じゃあ、近くの喫茶店にでも入って……」


と、勇翔が歩き出したその時、空から大量の火の球が降り注いだ。

「な!?」


「!ヴァーチャー、ソロネ、ケルディム!撃ち落とせ!」

指示された三人はそれぞれが弓矢を構えて、火の球に向けて放った。

程なくして、火の球は全て着弾する前に撃ち落とされたが、勇翔はふと、自分達が包囲されていることに気付いて凍牙王の鞘に手をかけた。


「……メタトロンさん……」


「えぇ……あれは陽動だった様ですね。本命は、我々を包囲すること………」

そうこうしていると、包囲している男達が剣を構えたので、メタトロン達も槍や剣を取り出して構えた。



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