魔天戦史
「…あ、危なかった……」
「あ、ありがとう、ユウく……」
「そうはいかないなぁ……」
「!?な……ッ!?」
突然声が聞こえたかと思うと、勇翔の腕から晶が消えていた。
慌てて周囲を見回すと、勇翔の後ろに、墜落する飛行機を背にする様に、アイザックが浮いていた。その腕の中には、気絶しているのか、ピクリとも動かない晶が捕まっていた。
「アイザック・シリウス……!?」
「……う………」
「……この子が、大聖母マリアの器か…」
「な、なんでそのことを……」
「……今は、一刻の猶予も無い…手荒いが、仕方が無いな……」
アイザックはそう言いながら、晶を左手で抱き抱えながら、右手を手刀にして構えた。
「……何を…ッ!?」
「………これも、目的達成の為だ………」
「ッ!?やめろぉッ!!」
勇翔はアイザックがしようとしてることを止める為に突撃した。
「……恨んでくれて、構わない……すまない………」
アイザックは、右手に構えた手刀で、晶のみぞおちを一撃で貫いた。
「ユウ君……って呼んで良いかな?」
勇翔の脳裏に、それまでの晶との会話が走馬燈の様に駆け巡った。
…その時だった。
「………復讐したいかい、ユウト…?」
勇翔は、その悪魔の囁きに……耳を傾けてしまった……
「ガアァァァァァァッ!!!」
勇翔は獣の様な咆哮を上げて、霊力を爆発させた。
「……なんだと……?」
アイザックは、その勇翔の姿が腑に落ちなかった。
その姿は、まるで邪悪な聖霊の様な姿だった。