魔天戦史


二人がそう話している間も、獣達はゆっくりと囲みを狭めてくる。だがアイリスは全く動じていない。ジョージは、サーベルの柄に手をかけてはいるが、まだ抜いてはいなかった。


「……まぁ、この程度なら可愛いものかしらね……」


「……は…?」



ジョージが聞くよりも早く、アイリスはしゃがんで、右手を地面に付けた。


「……お願い、ソフィア…」


「!?」



アイリスが呟くと、アイリスの右手を中心に、地面に純白に輝く魔方陣が現われた。獣達はその魔方陣に何か感じたのか、逃げようと身構えたが、既に魔方陣に束縛されて動けない様で、吠えながら必死にもがいている。



「……無駄よ…」



「ギャオンッ!?」


獣達の短い悲鳴が聞こえた瞬間、獣達は地面の純白の魔方陣から出現した純白に輝く槍に貫かれていた。


貫かれた獣達は、もはや息をしていない。アイリスが右手を離すと、魔方陣も槍も消滅し、獣達の屍が残るだけだった。



「……さぁ、いきましょう。話によれば、星詠みの郷はもう少しのはずよ」



アイリスはそう言いながら再び歩き始めた。

「……あれが、大地と太陽の複合魔法……それをこうもあっさりとやってのけるとは……やはり、貴方の方が心強いではありませんか……」



「どうかしたのかしら、ジョージ大佐?」



「……いえ…今参ります」



二人は再び、林の中を歩いていった。



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