魔天戦史
テムジンは剣を構えながら後ずさった。
「……ぬかったわ…まさか援軍がいたとはな……」
「……私も驚いたわ……勇翔君、あなたどうしてここに……」
「……カリアさんに、力を貸して貰ったんです…」
「……カリア……?」
「……カリア・ブライスシュテルンか……!?」
その名に一番反応したのは、ジョージだった。
「は、はい……ご存じなんですか?」
「……かつて、中東一帯の武装勢力が一斉に蜂起して、EU諸国に甚大な被害を及ぼした事件があった……その首謀者が、サマエル……つまり、カリアだった……聖典部隊のヨーロッパ方面と中東方面の三部隊が、カリアを捕らえようとしたが……捕縛はかなわず、部隊は壊滅的な被害を被った…私も、ヨーロッパ方面のバチカン部隊に所属していた……」
「……貴方は…?」
「…私は、救世軍極東方面軍部隊長、ジョージ・レミントン大佐です、坂原勇翔上級特佐殿………お目にかかれて光栄だが、挨拶はまた後ほどにしよう……」
「……はい……」
二人は改めてテムジンと向き合った。テムジンはまだ剣を構えているが、切りかかってくる様子は無い。だが、テムジンが意を決して切り込もうと動いたその瞬間に、声が轟いた。
「そこまでじゃ、テムジン!!」
「!?長老……!」
それは、年老いた老婆だった。隣りには、フードを被った女性が従っている。
「……その少年が、件の星じゃ…付いて来い、少年よ。話がある……」
老婆は勇翔にそう言ってどこかに行ってしまった。三人はテムジンの案内で、長老のもとに向かった。