魔天戦史
「……君の右手…暫く消えてて貰おうかな……ッ!!」
仙石が振るった刀の軌跡をなぞる様に、黒い光が地面を走って憲蔵に向かった。
「ッ!?」
憲蔵は慌てて体を捻って黒い光から身をかわした。
「……かわし損ねたか……!」
憲蔵は右手に力を込めたが、どういう訳か指先一つ動かない。
「…『影断ち』か……相変わらず厄介な奴だ……」
憲蔵は自分の影を見た。その影は、あるはずの右肘から先の影が無くなっていた。
「月属性の剣技、影断ち……対象の体では無く、影を斬ることでその部位の自由を奪う……」
「君程の霊力の持ち主だったら、完全に影は断てないけれど……動きを制限するには十分だろう?」
「く………ッ!」
「……ついでに、決着も着けてしまおうか……」
そう言った仙石は更に強大な霊力を溢れさせた。
「黄泉を束ねし月影の長よ、現世に来たりて縁を紡げ………」
言葉を紡ぐ仙石の回りを、黒い霊気の帯が渦巻いて行く。
「……おいで、ツクヨミ…!!」
すると、一瞬で仙石の回りの帯が絞まり、次の瞬間には黒い帯が砕け散り、中から仙石が現われた。
「……黄泉の大霊主、ツクヨミ……!!」
仙石は、着物の色が白から黒に変わり、黒かった瞳が月の様な金色に変わっていた。そして、濃密な黒い霊気を纏っている。
「………腕は、衰えていないか…良いだろう……!!」
憲蔵は再び体に霊気を巡らせ、体に稲妻を帯びた。二人の霊力は大気を揺さぶり、今にも大嵐が来そうな天候に変わった。
「……行くぞッ!!」
「行くよ、ツクヨミッ!!」
ついに、二人は激突した。