魔天戦史
「……京介さん…蓮さん……」
だが、京介は勇翔には答えずにグングニルの穂先を勇翔に突き付けた。
「………ッ!」
「……こないだ父上が言った通りだ…お前を本部に連行する」
「……抵抗はしないて下さい…」
蓮も、天叢雲剣の真打を構えている。
「…君達が来るとはな…」
緋凰が二人に声をかける。京介は勇翔を見据えたまま答えた。
「……緋凰様は下がって下さい…勇翔は俺が連れて行きます…」
「……ふむ…構わんが、出来ると思うか?」
そう問われた京介のグングニルを握る手に無意識に力が入る。その切っ先が微かに震えているのを、緋凰は見過ごさなかった。
「……彼の実力は本物だ…それに……」
緋凰はそこで言葉を切って、勇翔を見た。勇翔は息が荒いぎ、まだ霊力は尽きていない。
いや…むしろ漸く人並みといったところか…
緋凰はそう思い、思わず笑みがこぼれた。
「……彼は恐らく、まだまだ戦える…戦い方によっては……君達もやられるぞ?」
京介は聞きながら唇を噛んだ。グングニルを目一杯握り締めた。
「…彼は、もはやそれ程の実力者に成長している……私の攻撃を悉く防いでいたのだからな……」
「……下がって下さい…」
「……まぁ、良かろう…」
緋凰は剣を鞘に収めた。
「私はユリスの艦に行く……無事を祈っているよ」
緋凰はそう言って二人に背を向けてどこかへと飛んで行った。
「……どうやら、援軍が来た様だな…」
憲蔵は空中戦艦が主砲を放つのを見ていた。
「……恐らくユリスか…どうする、仙石。こうなってもまだ続けるのか?」