魔天戦史

憲蔵はフロントの受付に行った。

｢済まないが、大元帥は今どちらにいらっしゃるか分かるか？｣

｢お待ち下さい…大元帥様は、応接室でご客人と面会なさっています。｣

｢そうか。ありがとう。二人とも、行くぞ。｣

三人はフロントから長い廊下を渡ってそれからエレベーターで三階まで昇った。エレベーターから降りて三人は廊下を歩き、一つの扉の前で止まった。

｢どうしたんですか？｣
｢…この向こうに、大元帥がおられる。準備はいいか？｣

｢…はい！｣

｢いい返事だ！｣

憲蔵は扉を開けた。中は紅くまとめられた内装に中央に豪華な装飾がされたテーブルと、それを囲むようにソファが四つあった。窓から入る日差しは部屋全体を照らしている。その中央のソファに、テーブルを挟んで二人の男性が座っている。窓側の男性の脇には女性が立っている。その男性はこちらに気付いて微笑んだ。

｢やぁ、憲蔵。良く戻って来てくれたね。崇史も、その様子だと学園は無事だったようだね。｣

｢お久し振りです、大元帥…｣

二人は右手を胸に当てて軽く会釈した。

｢この人が…大元帥…｣
しかし勇翔はまだ目の前の男性が大元帥だとは思えなかった。金色の髪は日差しを受けて美しく輝き、瞳は深い藍色の見ているだけで吸い込まれそうな美しい眼をしている。その容姿は正に天使を連想させる。

｢君は…｣

大元帥は勇翔に眼を向けた。

｢彼が、坂原勇翔です。｣

｢そうか、君が…宜しく、坂原勇翔君。｣

｢は、はい！｣

勇翔は大元帥から差し出された右手を握った。憲蔵は扉側に座っている男性に眼を向けた。

…まさか貴方がお出でとは…何か、御社に重大な事件でも起こりましたか？｣

男性はゆっくりと憲蔵に振り返った。

｢いや、別に我が社は何の問題も無い。ご心配、痛み入るね、師紀元帥。｣

｢…この方は…｣

｢この方は、世界経済の三分の一を占める大企業、アリスタン社の総帥、オレイン・アリスタン殿だ。｣